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パニック障害のパニック発作、死への恐怖を癒す

下田屋寛子 ケース
パニック障害につきものの「また発作がでるのではないか」という予期不安や、発作に対する恐怖感を解消することに取り組んだケースです。

このクライアントさんは、電車の中で発作を経験した方でした。パニック発作自体、動悸が早鐘のように鳴り、呼吸が苦しくなり、「このままだと死んでしまうのではないか」といった恐怖感が伴うので、この恐怖感を和らげ、解消していくことが大切です。この恐怖感が残ったままだと、「発作の犠牲になっている自分」という世界観を強めることになり、予期不安がでたり、苦手な場所や環境の範囲が広がってしまう広場恐怖へとつながってしまうからです。このような悪循環にならないようにMRを使って進めていきました。

セッションでは、電車内で発作に見舞われている自分をエコーにして、恐怖感をよく感じながら、進めていきました。恐怖感を感じていることでわかってきたのは、「“本当に”死ぬのが怖い」と思っていることでした。そしてそんな風に感じている自分を「意気地なし」だと責めてもいることにも気づかれました。

この「“本当に”死ぬのが怖い」と言っている自分をさらにエコーにして「死」に対する恐怖感をよく感じてもらいました。なぜなら、なぜそこまで(“本当に”と言うほどに)怖がるのかの理由を潜在意識に探っていくためです。

すると、幼い頃の記憶が自然とでてきました。それは、親戚のおじさんについて大人たちがいつも語っていた「おじさんは、亡くなる前にとても苦しんで亡くなっていった」というものでした。この話は子供の耳にはとても怖く響いていて、「死=苦しみを伴うもの(だから死は怖い)」という思いが深く刻まれていたのでした。クライアントさんは、このエピソードを覚えてはいたけれども、ここまで影響を及ぼすほど自分の中に留まっていたとは思わなかったとおっしゃっていました。
セッションでは、この大人たちの話を聞いている幼い子を新たにエコーにして、この子の感情(恐怖感・怖さ、緊張感、罪悪感、無力感など)を解消していきました。

感情が解放されるにつれ、この子の表情も和らぎ、体も緩んできて、安心感が増えてきました。また周りの大人たちの声も脅すような声には響かなくなり、大人たちが悲壮感にあふれたものとしてこの子の目には映らなくもなってきます。さらに安心感を感じられるようになり、「死=苦しみ、怖い!」という極端な結びつき方の度合いも変わっていきました。


セラピー終了後、この安心感から、実際経験をした電車内での発作の経験を振り返ってみられると、当初は自分のことを「意気地なし」と責めていましたが、「しんどい経験だったよね」という自分へのやさしさに変わり、「また起きるのではないか」と根拠なく不安にかられる感じがない、という風に「発作」への捉え方も変化していました。また、人生全般において、苦しい思いをしないようにと、どこか自分の中で制限をかけていたことにも気づかれるきっかけにもなり、チャレンジすることに踏み出しやすくなれそうだ、ともおっしゃっていました。

その後、「電車に乗る」ことへの抵抗が減ってきていて、今は、パニック発作自体がでなくなるように、「パニック発作がでる」ことに作用する原因の部分に継続して取り組んでいらっしゃいます。