トラウマ
トラウマは解放できる
自然災害、事故、犯罪被害、日常生活の中で起こる家庭内暴力、虐待などといったトラウマ体験は、心と身体に多くの影響を及ぼします。またトラウマとは、時間の経過によって楽になったり、考えないようにすることでなくなるというものでもありません。
ですので、トラウマが解消されない限り、心的外傷後ストレス障害(PTSD)と呼ばれる様々な症状に苦しんでしまうのです。
一般的に従来の心理療法では、トラウマを解放するには、時間がかかる、または、扱うことが難しいと考えられてきました。しかしながら、メンタルヘル スの分野においては、心と身体に働きかけるセラピーの開発により、トラウマを克服する方法、PTSDから回復できるアプローチが活用されています。
EFT(感情解放のテクニック)や、EFTの応用バージョンであるマトリックス・リインプリンティングもそのアプローチの一つです。
これらは、世界の災害被災者や戦争被害者のトラウマケアのツールとして使われ、高い効果を上げています。
ではなぜ、これらのアプローチは、トラウマの解放に有効なのでしょうか?
トラウマが私たちの心と身体に影響を及ぼすメカニズムの観点から説明をしていきたいと思います。
トラウマの原因とは?
生き残りの危機、自分ではどうすることもできないことに直面すること
または、
- 予期していないことが起こった
- 感情、ショックの度合いが激しい、高い
- 一人で対処しなければならなかった
- どう対処すべきかわからなかった
これらの4つが重なった場合に、トラウマ的体験が心と身体に記憶として残り、心身に様々な影響を与えます。
トラウマの種類
▼Bigトラウマ
自然災害、性的虐待、暴力を伴う虐待、人質、戦争、テロ、拷問、深刻な事故、大病、子供の時に受けた性的虐待など
▼Small トラウマ
子供の時に安全な状態を奪われるような経験をした、予期しないことが起こった、繰り返 し起こること、故意に誰かによって傷つけられること(DV、いじめなど)、大切な人(もの)が突然亡(失)くなる、自動車事故、スポーツでの怪我、手術 (特に幼い頃に体験したもの)、大切な関係が失われる、生命に関わるような病気の発見など
- 「Small」でも毎日暴力を振るわれるなど、継続的にトラウマ的体験が続いている場合、一般的にはそちらの方が解放に時間がかかります。従って、「Big」「Small」という区別は、必ずしもダメージの大きさには比例しません。
生理的メカニズムから見るトラウマの形成
<闘争―逃避>
私たちには、危険や、心理的ストレスにさらされた際の正常な防衛反応として、「闘争―逃避」というメカニズムが備わっています。
闘争反応(Fight反応)とは、自分、自分の領域(テリトリー)、家族・グループにとって危険と感じると、自分や自分のものを守るために(防衛するために)闘おうとする反応です。
一方で、逃避反応(Flight反応)とは、「危険だが、もし闘ったら自分が負けてしまう、もしくは死んでしまうかもしれない」場合に、その危険から逃れようとする反応です。
これらの両反応をとる際に、私たちは、本能的に行動する必要があるため、脳の最も原始的な部分(脳幹と大脳辺縁系)を使って、生き残りに必要な行動に焦点を向けます。
そして、ストレス状態が終了すると、通常、交感神経優位から、副交感神経優位な状態に戻ります。
<フリーズ反応>
しかしながら、上記の闘争―逃避反応(Fight&Flight)でも対処ができない場合、つまり、闘争―逃避反応が失敗すると、私たちの反応は、フリーズ反応へ移行します。
つまり、「これは危険だ、しかし闘うことも逃げることもできない」場合、この危険を感じないように感覚を麻痺させ(Freeze、麻痺反応、意識、 感情を凍らせる、意識の部分だけ全体から切り離す)、トラウマ的体験や危険から身体を守ろうとするのです。時々、「記憶がない」というのは、このフリーズ 反応が働いたためです。
これは、トラウマ的な体験に対して、体の感覚を麻痺させることによって、危険から体を守ろうとするものであり、生き延びるためのもう一つの備わっている生理的メカニズムなのですが、しかし、
このフリーズ反応が解除されないと、
↓
「危険な状態は終わった」とは判断されない(記憶としても残ったままとなる)
↓
脳が危険な状態が続いていると判断してしまう
↓
交換神経優位のままになる
↓
神経組織も活性化され続ける
↓
体の緊張状態(呼吸が早くなる、筋肉が緊張するなど)が続く
となります。
また、このフリーズ反応を取った際に、トラウマ的な体験を受けた際のすべての情報(感情、思い、身体の反応、光景、音、においなど)が身体に取り込まれます。
これが、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の発症へとつながります。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)とは?
▼再体験
その時の記憶が、似たような状況が引き金になって蘇り、今現在起きているように感じる(フラッシュバック)
▼回避
トラウマ的体験を想起させるような状況、場面を、意識的、無意識的に回避する。回避行動の延長として、暴力、アルコールなどへの依存、中毒症状
▼過覚醒
交感神経優位なため、異常な警戒状態が続く。不眠、情緒不安定(抑うつ、強い怒り、不安障害など)を引き起こす
その他、自分に対する否定的な認知、自殺願望を引き起こす
従って、これらの症状を解消するには、心の傷となった根本の原因である、トラウマの出来事、体験を取り除くことが必要となります。
トラウマの解決方法
トラウマケアに対するエネルギー心理学をベースとしたセラピーの有効性
身体は骨と肉だけではなく、エネルギーシステムやエネルギーの流れがあることがすでにわかっています。東洋医学では数千年にわたりこれらを利用して きました。また、最近では量子学や細胞生理学の方面から、人の感情や感覚、思いもエネルギーであり、それが身体や心に影響を与えるという研究発表もなされています。
つまり、トラウマとは、トラウマ的体験によって身体にダウンロードされたエネルギー(ショック、思い、感情、目撃した光景、におい、音、人の言葉など)なのです。
EFTやマトリックスリインプリンティングは、身体の経絡(つぼ)を刺激することで、その身体にダウンロードされたエネルギーを解除し、解放するこ とができます。また、経絡の刺激自体が、脳の記憶を司る部位(海馬)や、安全か危険かの監視をしている扁桃体に働きかけ、トラウマ的体験の記憶と、身体の 反応の関係を断ち切ることに有効に働きます。
従って、EFTやマトリックスリインプリンティングに代表されるエネルギー心理学をべースとしたセラピーは、
- トラウマ的体験で経験したネガティブな感情、感覚、思いを解消し、柔軟な認知に導き、
- 記憶が格納されている脳の部位への刺激が、身体と記憶のつながりを解除する、
ことから、トラウマの解放に有効に働くといえます。
【参考文献】
- 「Matrix Reimprinting using EFT」(Karl Dawson and Sasha Allenby)
- Meta Health
- 「Biology of Belief」 (Dr. Bruce Lipton)
- 「Waking the Tiger:Healing Trauma」(Peter A. Levine)