EFTと心理カウンセリングの違い

 心理カウンセリングについて

現在、心の悩みや精神的な問題に対して主流となっているのが、認知行動療法に代表されるような対話形式の心理カウンセリングです。英語ではセラピーに対して、トークセッション「話中心のセッション」とも呼んでいます。

心理カウンセリングには様々な手法がありますが、共通しているのは、会話中心で思考のレベルで問題を解決しようと試みる点です。

つまり、認知(ビリーフ、解釈、考え方、受け取り方など)を変えようとする試みです。

苦しむのはものの受け取り方や考え方が歪んでいるから、つまり、認知の歪みが苦しみの原因だという考えです。
別の言葉で言えば、非合理的な解釈をしたり、自分を苦しめるビリーフを持っていることが苦しみの原因です。

 認知の歪みが苦しみにつながる例

たとえば、「私は上司から信用されていない」と信じていたとします。
すると、上司の行動や私に言う言葉を否定的に解釈します。

「私のことを信用していないから、この仕事を任せてもらえないんだ」とか。

もしかしたら、上司は私が忙しそうだから任せなかったかもしれないのに、思い込みが強いために歪んだ解釈をしてしまいます。

このとき、不愉快な感情が発生します。

イライラ、怒り、落ち込み、悲しみ、不安…

これがストレスの原因です。
ストレスがたまっていくと苦しくなります。

 心理カウンセリングの試み

このストレスを解消するためにはどうすればいいでしょうか?

心理カウンセリングでは、ストレスのもとになる解釈や思い込みなどを見つけ、それらを変えようとします。

例えば、論理的に別の可能性を考えてみるなどです。

本当に上司は私のことを信用していないか、もしかしたらそれが自分の勝手な思い込みではないかと疑い、別の可能性を考えてみるのです。

「上司は部長からのプレッシャーでいっぱいいっぱいで私に構う余裕がないのかもしれない」
「上司がBさんに仕事を頼むのは、Bさんが従順で頼みやすいからであって、私のことを信用していないわけではない」

このように客観的に見ていったり、第三者の力を借りながら別の見方を取り入れていくことで、「私は上司から信用されていない」という思い込みを緩めていきます。
すると、上司の言動に対する解釈が変わるので、ストレスは軽減するわけです。

または、過去になにか原因があるのか探り、例えば父親との関係が問題であった場合、上司に父親との過去を投影していたといった理解を持つことで、認知を緩ませようとするタイプのカウンセリングも多くあります。

 感情を扱わない

このように、これら心理カウンセリングは思考のレベルに焦点をあてているため、ネガティブな感情そのものを扱うことはありません。

あくまでも思いや認知を変えたり、自分に対する理解を深めることによって、ストレスが軽減されることを目指しています。

なぜ、ネガティブな感情そのものを扱わないかというと、思考は変えることができるけれど、感情は変えることは困難だと考えているからです。

「感情は変えられない」「感情を変えるのは極めて困難」

これが多くの心理カウンセリングの大前提であり、そのため、感情に直接ワークせず、思考のレベルで操作しようとするのです。

 心理カウンセリングの限界

最近イギリスの新聞紙、ガーディアンやデイリーメールなどでは、認知行動療法が欝にあまり効果がないという報道が多くなされています。※下記リンクを参照

時間が経つとともに効果が薄れ、新しい見方を保持している人がほとんどいないという研究結果などが発表されているためです。

それはやはり、いくつものネガティブな感情が蓄積されている思い込みなどは、思考のレベルだけで変えるのは非常に困難だということにあります。

ごく簡単な例をあげてみましょう。

「私は人が信用できない」という思い込みが強い場合、
「○○さんは、一度もあなたを裏切ったことはないですよね? 」
「すべての人が悪い人なわけではありません。」
「信頼できる人はどんな人でしょうか?それに合っている人は大丈夫だと思いませんか?」
などなど、いろいろな角度から「信用できる人もいる」「人を信頼しても良い」という見方を提示されても、 “それはすべて頭では分かる”けど、実際はそう思えないというケースが多くあります。

こういったケースの場合、認知(ビリーフ)を直接変えようとしてもまず無理です。
なぜならこの認知が作られる過程で相当な心の傷が作られているからです。

何度も裏切られて苦しい気持ちを味わったでしょう。
そのため、「人が信用できない」という認知になっています。
この認知にいろんな感情がくっついているので、そう簡単に手放せないのです。

残念なことに、私たちを真に苦しめる思い込みほど、感情値も強いものです。
または、人を信用できない原因が過去にあったことを理解しても、ある程度は楽になっても、やはり人を信用するのが怖いという状態はそのままであるケースが非常に多いです。

 EFTの可能性:自然に努力なしに変わる認知

EFTは、心理カウンセリングが不可能だとした領域をクリアした画期的な手法です。

感情を直接解放することに成功した心理療法なのです。

感情を感じながら、身体のいくつかのツボを指でトントン叩き、感情や思いを口に出していきます。
すると、感情値が下がっていきます。
非常に単純で、ストレス解消にはもってこいの方法です。
とはいえ、表面的な感情を解放しただけでは、認知自体は変わりません。

この記事に挙げた上司の例で言えば、上司から受けたストレスは解消できるものの、「私は上司から信用されていない」という根本の認知自体がそのままであれば、また上司の別の言動でストレスが生まれます。
いたちごっこです。

ところが、EFTの優れた点は、単に今のストレス解消に使えるだけではなく、そもそもネガティブな認知(ビリーフ)が生まれた原因に簡単に到達でき、それを解放できる点にあります。

たとえば幼少期に両親から冷たい扱いを受けたとか、必要なときに注意を向けてもらえなかったといった原因にたどり着き、そこにある悲しみ、不安、怒りなどといった感情を解放します。

感情がすっかり解放されると、EFTでは「認知のシフト」と呼ぶものが“自然に”起きます。

「親も余裕がなかったんだな。自分はそんなにダメだったわけじゃない」
「上司は上司の考えで動いているだけだ」
などと、見方を変えようという努力なしに緩んだ思いに勝手に変化するのです。

とはいえ、使いこなせるようになるまでには、それなりの練習と自己ワークの積み重ねが必要です。
スポーツや趣味が上達するにはある程度の時間が必要です。
EFTも同様です。

ですが、使いこなせるようになれば、認知行動療法では達成しえなかった領域の改善が見込めます。
この領域にメスを入れられれば、生き方がグンと変わります。
ネガティブなセルフイメージを変えたり、無意識に人生を作っているプログラムなども変えることができます。
深いレベルの認知が変われば、心と身体がかなり緩みます。

その後の人生が圧倒的に生きやすくなるでしょう。